イベントの組み立て方

なぜ書こうと思ったのか

最近いくつかのイベントに参加したり運営として関わったりしてみて, 思ったよりも行き当たりばったりでイベントが作られているのかもしれないと感じました. そこでまずイベントの組み立て方について自分の知っていることを公開して, それに対する反応をもらったり, 議論のきっかけになったりしたらいいなと思い, この記事を書いています. 参加者も運営も幸せなイベントが増える方が嬉しいので.

この記事で言うイベントは

  • 比較的短期 (1日〜数日)
  • 当日のみ関わる参加者と事前準備をする運営がいる
  • イベント当日は皆が同じ場所に集まる

という形式を前提とします.

要約 (TL;DRあるいは今北産業)

書くとは言いましたが, たぶんけっこう長くなるので要約を最初に書いておきます.

  1. 「イベントが終わったときの参加者の内的状態 (心と思考の両方含んだ精神の状態) がどうなっていて欲しいか」をまず考えよう. これが最初です. 絶対に!
  2. 次に, その狙いを達成するための手段を各種制約の中で組み立てる.
  3. そしてイベント終了後すこし間を置いてから, 最初の狙いに照らして「狙い通りだったこと」「狙いが達成できなかったこと」「意外と上手く行ってしまったこと」などの点を振り返り分析する.

本文

この記事では「イベントを作るときに常に意識していること」について書いていきます. ここで言うイベントは, 大勢で集って飲み会をしたり, 何かの勉強会で発表をしたり, キャンプに行ったりなどけっこう広い範囲のことを想定しています.

自分の経験から事例を拾ってくると, 学部4回生での卒業ゼミの発表だったり, 数学カフェでの発表や数学茶屋の運営, YMCAでの (運営側である) リーダーとしての活動というものがあります. 公益財団法人YMCA (http://www.ymcajapan.org/) とはキリスト教を基盤として社会活動を行う団体です. この団体が開催していたキャンプに参加者としてお世話にもなったし, 大学生のときに運営側もやっていました. 4回生のときの卒業ゼミでは数学的な内容の指導以外に発表の方法の指導も受けました.

主にこのYMCAと卒業ゼミで身に付けたものをこれから書いていきます. 実践のみで身に付けたので理論面は雑かもしれませんが悪しからず.

狙いの設定

まず狙いの設定とその狙いを運営全員で共有することが一番大事です.

要約でも書いたように, 狙いとは「参加者にどんな状態で帰ってもらいたいか」ということです. たいていの場合

  • 参加者のイメージ
  • どんな気持ちになったり, どんな影響を受けたりして欲しいか

をセットで考えることになるでしょう. それはこの両者を1つずつ決めるには, もう一方が決まってないと判断が難しいからです. ちなみに私は後者のことを「おみやげ」と表現することが多いです. 参加者の方々にイベントの「おみやげ」として, 何らの気持ちや心境の変化を持ち帰ってもらうイメージです. (これは確か卒業ゼミで先生が仰っていた表現だった記憶がありますが, うろ覚えです.)

狙いとしては, 例えば数学のイベントであれば

  • 数学の理解レベルはどんな人を対象とするのか
  • 数学とどういう付き合い方をしている人を対象とするのか
  • どういう雰囲気の数学イベントを求めている人を対象とするのか
  • 終わったときにどんな感想を持って欲しいのか
  • 「数学する仲間と知り合えて良かった」なのか
  • 「知識が増えて嬉しい」なのか
  • 「全然分からなかったけどそれが刺激になった」なのか

のように考えられるパターンはけっこう多いです. そしてこの中から運営の方々のそれぞれの想いに近いものを拾い, それぞれの想いを伝え合い (ときにはぶつけ合って) 運営としての「狙い」を固めていきます.

なぜ必ずこれを最初にやらないといけないかと言うと,

  • 狙いが先に決まっていないと, イベントで実際にやることを決めるための基準が定まっていないために, 何をやるかの判断がブレる
  • 当日, 臨機応変な対応が求められる場面でちぐはぐな対応になってしまう
  • 事後の振り返りで, 何を良かったと評価し, 何を反省すればいいかがあやふやになる

など何のためのイベントか分からなくなり, 参加者も運営も幸せになりません.

逆の言い方をすると, 狙いを最初に定め運営で共有しておくことで,

  • イベントの内容を決める基準が固定されているので議論しやすくなる
  • 当日の突然のアクシデントにも運営が連携して対処でき, 参加者が感じる違和感も少なく済む
  • 基準に照らして振り返りをするため, 良かったところや悪かったところを客観的に評価でき, 今後のイベント運営に活かせられる

といういいことがあるということです.

また, この段階では具体的にやることには踏み込まず, 想いや気持ちのようなふわふわしているもので狙いを表現します. というのはその狙いを達成する手段というのは無数にあり, さらに会場の物理的な制約なども含めると検討するにはパターンが多過ぎるからです. まずは指針となるものを先に決めるのが大事です.

手段の組み立て

では狙いが設定されたということで, 具体的にどんな活動をするかという「手段」の部分について考えていきましょう. ここでは狙いよりも具体的かつ技術的なことについて書いていきます.

前提として, イベント当日には参加者と運営が一堂に会しているとします. 加えて参加者の中には初対面どうしの人もいる, ということにしておきましょう. その状態から全体を「1つの集団」にしていくことを目指します. (もし既に全員が知り合いだった場合でも, ここで説明する流れをアレンジして, お互いの知らなかった側面を見付けられるようなイベントにしてもいいかもしれません.)

導入

初対面の人どうしがいるのでまずはそこにある壁をどうにかしていきます.

参加者にいきなり隣りにいる初対面の人と話せとか, 前に出て長時間スピーチをしろとかはハードルが高過ぎるので, まずは集団に埋没したままできる簡単なことをしてもらいます. 例えば, 進行役vs.参加者でじゃんけんをして最後まで勝ち残った人が優勝というゲームとか, 順々に簡単な質問に答えてもらうとか (Yes/Noで答えられるものや「ごきげんよう」のサイコロトークみたいなイメージ) から始めます. とにかく参加者に声を出したり身体を動かしたりしてもらうのが大事です. これをすることで参加者の意識を「離れて見てる人」から「このイベントの一部」へ変えます.

この段階では各参加者と進行役が1対1でつながっている状態が作れれば十分です. 参加者からは「私は今この人の話を聞けばいいのか」と思ってもらい, 進行役からは「今私はこの人達に話し掛けているんだ」という雰囲気が出ていれば成功です.

ここで気を付ける必要があるは, 既に知り合いである参加者どうしがいるパターンです. 一見イベントの雰囲気にプラスなように思えますが, 意外と雰囲気作りの障害になることがあります. 知ってる人どうしで固まってしまい, (本人たちにはその意識は無いものの) それ以外の人達に疎外感を与えることも起き得るからです. そのため参加者に知り合いどうしがいることには一切触れず, 全員に平等に話し掛けることが進行役にとって大事なことです.

関係の移行

各参加者と進行役の間の関係が築けたところで, 段々とそれを参加者どうしの関係へ移行していきます.

運営は導入の部分で参加者がどんな人なのかを少しは知っているはずです. そこで参加者と参加者の間に入って同じ話題を振って会話するように促したり, 両者の情報交換の仲立ちをします. 具体的にやるならグループディスカッションやチーム対抗の競技などになります. その際, 各グループに運営が付きコミュニケーションを促すことになると思いますが, メンバーの年齢や個々人の性格によって状況は様々ですので臨機応変にコミュ力を振り絞って頑張りましょう(笑)

この時点で運営が参加者を観察するポイントとしては

  • 参加者ごとの発言回数, 特に極端に発言回数が少ない参加者がいないか
  • 参加者どうしの発言回数

です. そして発言回数が少ない人が発言しやすい状況を作ったり, あまり話していない参加者どうしの間に立って会話をしたりして, 参加者どうしの関係に濃淡を作らないようにします.

ここまで書いた関係の移行のやり方は勉強会の発表などには当て嵌まりづらいですが, 役割としては質疑応答の時間が相当すると思います. 受けた質問を発表者が聴衆全員に対して復唱することで質問者のことを皆に知ってもらうことができます. 実際に会話はしないものの, 同じ聴衆にいる人に目が向くことで参加者どうしの関係ができていくはずです.

集団の完成

関係の移行を色々な組み合わせや色々なサイズの集団で行っていき, 参加者と運営の全員がお互いのことを知り, 全体が1つの集団になればイベント自体は完了です. 運営の手助け無しに各所で会話が自然発生するような雰囲気になっていると思います. 勉強会の発表の例で言うと, 発表が終わった瞬間に聴衆どうしで自然と感想を言い合ったり, 分からなかったところを質問したりしていれば大成功です. ここまで到達できれば, もう運営がやるべきことはあまりありません. 運営も参加者としてイベントを楽しみましょう.

あまり頑張らなくてもこういった良い雰囲気になってるかもしれませんが, それは運営が参加者に助けられていただけですので, あくまで運営が狙いを定めてイベントを進めることが大事です.

振り返り

さて無事イベントも終わって, ここまでの準備を思い出しているところです. このときだいたいの人はやや興奮ぎみにイベントの成功を喜んでいるでしょう. 苦労して準備したことが報われた気持ちになっているでしょう. これはごく普通なことですし, それだけ頑張ったのだから存分にそのいい気分にひたりましょう.

イベントの振り返りを行うのはその熱狂から醒めてからです. イベント終了直後の高揚した状態ではポジティブな評価ばかり出てくるでしょう. ネガティブな評価が無ければ振り返りとして片手落ちです.

どんなイベントにも

  • 狙いどおり上手く行ったところ
  • 狙いは良かったが失敗したところ
  • 対処できた想定外なこと
  • 対処できなかった想定外なこと
  • 予想外に上手く行ってしまったこと
  • そもそも狙いが良くなかったと感じた瞬間

があると思います. それらが元々の狙いに照らして良かったことなのか悪かったことなのかを評価しましょう. 別に失敗したことは問題ではありません. それを次の改善につなげられないことが問題なのです. 誰かを責めるでもなく, 責任逃れをするでもなく振り返りの話し合いができると良いと思います. そして次のイベントでこの振り返りを活かしていきましょう!!

いくつか補足

ここまででほとんどの内容について書き終わりました. 最後に「私がどういうイベント運営が良いと考えているのか」をはっきりさせるため, いくつか思うところを書き出してみます.

参加者を想定しないと何がマズいのでしょうか? それは, つまらなそうにしていた参加者がいたり, イベント後に不満が出たときに「あの人はこのイベントが対象としていなかったから仕方無い」という言い訳が簡単にできてしまうことです. 本当に想定外の人だったのであれば

  • 今後そういう人も対象にするかどうか
  • 広報でイベントの狙いが上手く伝えられていたか

を考えるべきです.

イベントの狙いを定めておくと運営以外にもよい影響があります. (振り返りの内容を公開する前提を置きますが) 振り返りの内容を知ることで, 先行事例としてどういうイベントをやるとどんな効果があるのかを他の人も知ることができます. その人が別のイベントを開いたとすると, 元の運営は2つのイベントに対して良いことをしたことになります.

狙いの方向性が一致しない場合はどうしたらいいでしょうか? その場合は諦めましょう. それぞれの信念の不一致ですので距離を置いて棲み分けましょう. そしてそれぞれ別のイベントを開く方が平和だと思います.

では手段の方向性が一致しない場合は? 手段の話まで進んでいるなら狙いの方向性では一致しているはずです. その合意した狙いを基準にして手段の善し悪しを評価しましょう. 基準が決まっている議論であればそこまで荒れないはずです.

この記事を書いていて思い出したこと.「キャンプが参加者にどう影響したのかは, 次にキャンプに来たときに分かる」とYMCAのスタッフから言われたことがあります. たかだか数日の時間ですぐに変わるわけではなく, そこで得た何かの影響が少しずつ現れてきて, 次に会ったときに目に見える変化になっている. という意味だと思っています.

私は数学茶屋というイベントで運営だったのですが, 実はここに書いたことを考えながらイベントの準備と進行をしていました. ここまで観察されていることを気持ち悪く思うかもしれませんが, イベントを良いものにするためだったので, ご勘弁ください.

そして数学茶屋で一緒に運営をやった方々は, イベントの組み立て方への私の強いこだわりを知ってるんじゃないかと思います. その裏にはこんなことがあったんだよ, というネタばらしの記事でした.

めっちゃ長くなってしまいましたが, ここまで読んでくださってありがとうございました.

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